雨上がりの追憶part2

猫の世話に関しては僕は完全に素人だった。
この三毛猫の体は大して汚れていない、弱々しいが具合が悪い訳ではなさそうだ。
まず、水を用意し、バスタオルで寝床を作った。
念のため、手元にあった段ボール箱に新聞紙をくしゃくしゃに丸めたものを敷き詰めた自作のネコトイレを作った。
これでいっかと、僕はパソコンの電源を入れた。
こいつがダメならやはりカスタマーセンターへ電話だ。
起動させたパソコン画面は正常、そこから株価ボードへ…。
おいおい、お前かよ…
保護したばかりの三毛猫がいつの間にかパソコンの上に寝そべってきた。
猫という生き物はよく主人の仕事の邪魔をするとはよく聞くけど、僕はおまえの主人じゃないぞ。
…かといって無理にどかすのも気が引ける。
もう一度タブレット端末を起動。例の株価ボードを映そうとするとまた画面がゆがむ。
これはいよいよカスタマーセンターか。
思い切って電話する。

“おかけになった電話は現在込み合っております”

機械的な音声が流れた。

“時間をおいてもう一度おかけ直し下さい。”

これ、イライラするやつだ。
はぁ…とため息が出た。

“にゃあ゛あ゛あ゛~…”

気づいたら、三毛猫が僕のひざの上に登っていた。
体の力が抜ける気がした。
おまえの勝ちだ。とことん付き合ってやるよ。
そっと三毛猫の頭を撫でてみる。自分でもぎこちなく感じる。
反対に三毛猫の方は気持ちよさげに目を細める。
少しゴワゴワした手触りだが、案外悪くない。
こうやって撫でていると仕事の緊張感が薄れるもんだな。
自分がどれだけ気を張っていたのかが分かる。
暫く撫でていると、三毛猫は急に僕のひざから飛び降り、本棚の中に潜り込んだ。

“お、おいおい…”

あまりの突然の行動に若干戸惑った。
猫ってこういうことを突然やるものなのか⁉

“こらこら、出てこい。”
“おーい”

本棚の隙間に手を入れたり覗いたりしながら三毛猫を探す。
一つ一つ本を出し入れしていくと、一枚のレコード盤が出てきた。

 

〈続く〉

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