【中の人のよもやま話】題名のない小説(その6)

…ここは、どこだ?

白く簡素な天井。

窓の外から元気にはしゃぐ声たち。

うっすら臭う消毒薬。

そして心配そうに僕を見る三人の目。

アツヒコ、マサチカ、そして担任のサトウ先生だ。

僕はボーっとする頭を押さえながら上体を起こした。全身の汗がハンパない。

「大丈夫か?」

「お前授業終わったとたんいきなり倒れたんだよ。」

「保健室に運んだら寝てるって言われて、本当にびっくりしたぞ。」

「親御さん呼ぶか?」

…親御さん?…そうだっ、おばあちゃん!

「先生!ぼくのおばあちゃんが大変なんです!一緒に来て!!」

ただならぬ僕の気配にサトウ先生は面食らった。

「ななななな何言ってんだ。お前の方が大丈夫なのか?さっきまで倒れていたんだぞ。普通逆だろう。」

サトウ先生は普段から僕たち生徒に優しかった。

親とケンカして家出した女子を夜遅くまで一緒に探してくれたり、ボロボロだった飼育小屋を立て替えてもらうための署名運動を起した時も僕たちの責任者になってくれた。

だからきっと僕の言うことを信じてくれると思った。

「お願いします!おばあちゃんを助けたいんだ!」

「…ホントにそう思っているんだな。」

僕は大きくうなずき、あふれそうな涙をこらえながら、もう一度言った。

「お願いします!」

「…よし、今から急いで行って何事もなければ、ギリギリ昼休み中には帰って来られるだろう。」

「アツヒコ、マサチカは連絡係だ。何かあったら連絡するから、みんなへの説明を頼む。なっ。」

「わかりました!」

えーっとすねるアツヒコを制しながらマサチカはしっかり答えた。

「車で行けばすぐだ。急ぐぞ。」

「はい。」

駐車場に行き、先生と僕は急いで車に乗り込み発車する。

おばあちゃん、間に合って。

 

——————————–

 

ピーッ…
  ピーッ…
    ピーッ…

「…気分はどう?」

「はぁ、ああ…タク×××…××…」

まだろれつが上手く回らないみたいだ。

僕は涙と鼻水でグシャグシャになった顔でおばあちゃんに聞いてみたんだ。

今、病院の集中治療室のベットでおばあちゃんは横たわっている。

おばあちゃんの体には何本もの管が付いているけれど明日辺りに何もなければ取れるらしい。

お医者さんの話だと、脳溢血の初期症状で倒れたらしい。
あのまま発見が遅かったら今ごろは…。

と、今考えてもゾッとする。

「お父さんが一番早い便で帰国するって。」

サトウ先生がまだ付き添っていてくれてる。

僕はコクンとうなずき、おばあちゃんに「またね。」と言って集中治療室を出た。

廊下のベンチに腰掛け、つい数時間前のあの時を思い出す。

 

——————————–

 

家の玄関のドアを開ける前から“まる”と“華”の鳴き声で事態は只事ではないのが分かった。

僕の持ってる鍵でドアを開けると、すぐ目の前に受話器片手に倒れているおばあちゃんを発見した。

僕の頭の中が真っ白になった。

全身の力が抜け、“まる”と“華”が懸命に鳴いている声すら遠くに感じた。

それから暫くして近づいてくるサイレンの音。
先生と救急隊員とのやりとりの声。

先生は鳴きまくる“まる”と“華”を別室に押し込め、家の戸締りをし、僕を病院まで車で連れて行ってくれた。

「学校には連絡しといたから。」

「…。」

「お前、今日もう疲れただろう。家に帰るか?」

「…。」

気持ちは嬉しいけれど、何か答えるのもうっとおしく、相変わらず力出ない。

「眠い…。」そう言うのが精いっぱいだった。

「そうか。ここで仮眠でもしとけ、お父さん来たら起してやるよ。」

それにも返答せず、僕はベンチに横になった。

 

 

その7へ続く

 

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